見逃せない注文住宅
茶室などに使う例は昔からあるのですが、基本的には下地材です。
そのうち気が向けば、漆喰などで仕上げて白い壁にすることもできることを考えて選んだ素材です。
仕上げる余地を残しておくことで、新品であること、完成されていることをまぬがれるようにしています」とKさん。
床の敷き瓦は椿油を施してあり、使っているうちに表面の色がなじんでいって、時間がたつうちに色も質感も深みを増す。
Oさんが出した具体的要望は、一つはOMソーラーであり、もう一つがちゃんと火を燃やせる暖炉の設置である。
「ナマの火が見たかったんです。
この要望にはKさんも悩んでいたみたいですが、最終的に一階のリビングの隅につきました。
家ができてしばらくして、実家の母が遊びにきたのですが、暖炉で火を燃やしている顔がとても楽しそうだった」とOさんは笑う。
キッチンはヨットのコックピットのように狭くて機能的になど、こまかい点での要望はほかにもいくつかあったが、そのほかはKさんの提案をもとに進んだ。
Oさんは何回となく建築現場に足を運び、現場の大工さんをはじめ職人さんと仲よしになったそうだ。
「私のこまかい質問に、職人さんはていねいに答えてくださるんです。
愛情を持ってつくってもらっているとわかって、とてもうれしかった。
その愛情に応えるよう、ていねいに暮らそうとあらためて心しました」そして九八年十二月、年の瀬がせまったころに完成。
Kさんに設計を依頼してから、実に二年近い月日がたっていた。
引渡しの日、OさんはKさんをはじめ、かかわってくれた職人さん全員を招いて、新居で完成パーティーを祝った。
私ひとりの時間を豊かに抱いてくれる空間完成後、Oさんは自宅に名前をつけた。
バク・ファーム。
悪夢を食う縁起のよい動物を何頭も飼育する農場みたいにしよう、という意図である。
バク・ファーム完成の挨拶状にこんな言葉がある。
「この家は私ひとりの時間を豊かに抱いてくれる空間です」「この家での暮らしは私をていねいな生活者にしてくれました」。
Oさんにとって、家は単に生活の場であるだけでなく、自分の生き方を具現化してくれる愛情の対象である。
「私になじむ家として育てている、という感覚なんです。
生きているうちに全部試せるだろうかと思うほど、この家はたくさんの可能性を秘めています。
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